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『プロット』

 

「おーい、こくとークン! やっほー」
「……ああ、あんたか」

上っ調子に響く声の主は見知った顔の人物だった。

「うん、お久やなあ」
「そうだな。明峰に?」
「そ、呼び出されたんよ。華亀クンはおる?」
「いない。出払った」
「あちゃあー、行きちごたか」
「用があったのか?」
「いんや。折角やったら挨拶しとこー思ったけど、まあええわ。黒冬クンは元気……みたいやな!」
「ああ。変わりはない」
「そりゃなにより」

「あんた、こっちに戻ってくる気はないのか?」
「んー? あー、そうなあ」

「そうな。うん。全く戻ってこないってわけでも無いし、仕事でちょくちょくこっち来るとは思うけど、拠点はあっちのままにしようかなー思っとんよ」
「気に入ったのか? どこだっけか」
「静岡。まあ、そんなもんやな」

「そうか」

「ああ、そうだ。言い忘れたが」
「んんー?」
「今回呼び出されたってことは、ネカジの方じゃねえ」
「せやろな。ってなるとー、もしかして始める感じなん?」
「いや。ならねえようにする。そのために立ち回らなきゃいけない案件が多い。それで呼び出されたんだろ」
「うーわそれ絶対めんどいやつやん。まあええけど。折角やったら派手にドンパチやりたかったわあ」
「今回ばかしはドンパチの方が面倒ごとになる。制裁目的じゃねえしな。」
「わーっとるわーっとるって。ちなみにどっち方面?」


「いった!」
「来てたなら連絡」
「入るとこやったやろ!」
「時間が惜しい言うたやろ」
「だからってなあお前」
「やかましい。説明するからさっさと中入り」
「……あ、おい!」



「……やること多くない? これ」
「ようけないようけない。まとめたら情報操作、護衛、立ち会い、輸送や。ついでに犬の世話。たった5つや」
「それが多いって言うねん! 初手これかいな。はああああ。しかも長期」
「やらんの?」
「いや、やるけどぉー。やるけど、なぁ」
「報酬? 時間?」
「潤い」
「……ええわ。追加でここのVIP席。この中の好きな日でええ」
「よっし!! じゃあここ!」
「はいはい」

「そうや、結構先の話になるんやけど」
「何?」
「8月は仕事入れたくないから、7月までにしといてくれん? 9月再開で」
「ああ、まあええけど。バカンスか?」
「いや。あー、まあそんな感じや」
「ふうん」
「……あー、拠点あっちのままにしようかな思って。でもじいちゃん家ほっときたくないし、流石にご近所さんに草むしりお願いすんの気が引けてなあ。夏休み兼ねて、な」
「そか」
「あー……だから、まあ絶対入れんでな仕事。入れてもやらんから」
「わかったわかった」

「なら、それまでキリキリ働いてもらうわ」

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